JIAMでの議員研修に行ってきました

10月18日から20日まで2泊3日のスケジュールで全国市町村国際文化研修所で開講された「地方財政制度の基本と自治体財政」研修を受講し、昨日、無事に修了させていただきました。なお、当町からの参加は私以外には、一期目の松田洋子議員のみでした。私は4年前に続き、本講座の受講は2回目となります。

全国から64人の地方議員が参加され、初日は鳥取県伯耆町の森安保町長に「市町村財政の健全化」について事例を交えながら講義していただきました。

森安町長は鳥取県伯耆町の町政運営や財政健全化に向けた取り組みを町長自らが実体験をもとに、より良い住民サービスにつなげるための施策や自治体行政運営における今後の展望等などについても触れながら講義されました。

 私が以前から言っていることにも通じますが、人口減少=GDPの減少ではありません。そのことを具体的に説明してくださいました。財政健全化の目的は、住民サービスの質を上げ、料金は上げないことを実現すること。当町は財政健全化比率、財政力指数、財政調整基金などの面において健全な財政運営がなされていますが、西大路定住宅地開発事業や町道西大路鎌掛線改良事業などの要因で、現在の将来負担比率が40%を超えています。今後、老朽化施設や水道管更新等の支出が予想されるため、少しでも将来負担比率を下げていくことに努める必要があると感じます。しかし、あまりにも健全化を意識しすぎて政策や事業計画が委縮してしまっては住民サービスの低減につながってしまう恐れも出てきます。伯耆町とは諸事情が異なるので参考になる事例とそうでない事例がありますが、ダイナミックかつスマートな政策立案が行えるよう、議会としても意見していきたいと思います。

2日目の講師は総務省地方財政審議会の小西砂千夫会長。自治体財政関連では、知らない人はいないというくらい有名な方です。私も小西氏の講義を拝聴するのは2回目ですが、今回も大変すばらしい講義内容で、ぜひ日野町にもお越しいただき、議員のみならず職員に向けても講演していただきたいと思いました。

3日目は兵庫県川西市の松木茂弘副市長が、これまで実施してきた財政再建への取組事例の紹介と考え方についての講義してくださいました。

3日間の研修で学んだこと、感じたことは次の通りです。自治体財政というものは非常に複雑です。それ故、私も議員職に就かせていただいてからというもの、これを理解するために、これまで何回も研修を受講し、関連書籍からも多くを勉強しましたが、未だに十分に理解できているとは言えません。


自治体の政策運営では常に財政が課題となります。お金のある団体と、無い団体の差は決して小さくありません。その差はどこから来るのか。一方、自治体には法律上、義務付けられた事務があり、その執行に財政上、困難が生じることはあってはならないため、一定の財源保障がされています。それでは、財源保障があることと、自治体間の財政力に歴然とした差があることは、どのような意味で両立するのか。その視点に立つことが、地方財政制度を理解する上での手がかりとなります。
国の財政と異なる地方財政の特徴は、事務配分を所与とすることです。我が国は、いわゆる融合的事務配分(国、広域自治体、基礎自治体の所掌事務が切り分けられない事務がある、典型は義務教育)の下で、国は地方に法令に基づいて事務配分をしています。地方公共団体においては、法律的には、国が一定の事務を委任することが予定されています。実存としては、地域共同体があって国家があるのですが、法令上は逆であり、そのことが地方分権の推進や地方自治の尊重の根拠となっています。
国は地方公共団体に事務配分を行う以上、それに相応しい財源を付与する責務があります。ただし、どの程度まで丁寧に保障するかについては一定の幅があり、国によって大きく異なります。国が地方に課税権を保障するだけで事足りるという割り切りも可能です。
事務配分を法令で付与することは、近代国家なら当たり前のことですが、事務配分に対する財政需要を、地方財政全体に対して測定し、所要額として決定することは、基本、世界でも我が国でしか行われていません。それは、大別して次の2つの困難が伴うからです。
1つはどのように見積もるかという技術的な理由。そしてもう1つは、財政需要を見積もった以上、それと同額の歳入を国の責任において確保する責務が生じるからです。
事務配分を起点に、地方財政計画を通じて、それに相応しい財政需要を見積もって、所要額を確保することが、わが国の地方財政制度の基本となっています。
国の一般会計の歳入歳出と、国の特別会計である交付税及び譲与税配付金特別会計の歳入歳出、地方財政計画の歳入歳出の関係において注意すべきことは、地方財政計画の歳出と歳入が一致している理由が、歳入にあわせて歳出を決定しているのか、歳出にあわせて歳入を決めているのかという点ですが、答えは後者であって、その際、財源所要額に対する不足額を地方交付税(及び臨時財政対策債)で埋めています。地方交付税の財源は、国税4税(法人税、所得税、相続税、消費税)の法定率分+地方法人税の全額ですが、現実には、毎年度、地方財政対策としてさまざまな財源手当を行っています。その意味において、地方交付税は国税収入によって決まると考えるのは誤解だと言えます。
漢文に、量出制入(出ずるを図りて入るを制す、歳出所要額を基に歳入を決めていく)か量入制出(入るを量りて出ずるを制す、歳入見込みを制約にして歳出を決めていく)というのがあります。財政の基本はどちらか。自治体では、財政の基本は同様に量入制出と考えられることが多いと思います。確保できる財源に限りがあるので、その範囲で歳出予算を押さえ込むことが財政だという見方です。しかし、財政の基本が、本来、量入制出であるはずがありません。もしもそうだとすると、国民・住民が税負担に応じてくれる範囲で歳出を行うということになってしまいます。先に税負担をお願いしたところで、その理解を得ることは難しいでしょうから、財政規模は極めて小さなものとなってしまいます。むしろ、提供すべき公共サービスを先に示した上で、それに相応しい税負担をお願いするという量出制入こそ、財政の基本となります。
それではなぜ、自治体の財政担当者が、量入制出が財政の基本と感じるのか。それは事務配分を基本にして、地方財政計画の歳出を積み上げて、同額の歳入を地方交付税等によって確保するという、量出制入を地方財政計画ベースで行い、それを地方交付税の算定等を通じて公平に自治体に配分しているので、事務配分にふさわしい財源は確保できている構図となっているからです。本来、量出制入であるはずが、量入制出と感じられるのは、まさに地方財政制度が機能している結果であるとも言えます。
なお、地方財政計画の歳出で捕捉されていない、あるいは量的に十分でない財政需要に対して、自治体が住民に対して特に税負担を求めようとする場合には、超過課税(当県で検討されている交通税も)や法定外税の実施が可能です。そのときには、自治体もまた量出制入を行っているといえます。
地方交付税の算定とは、国の予算と地方財政計画の関係で決まった地方交付税の総額を、地方財政計画の歳出を前提に、各団体に配分することです。普通交付税については全体計画を策定して、単位費用を確定させ、補正係数の種類とともに、地方交付税法の改正で法定し、最終的に省令で補正係数を確定させて普通交付税額を決定します。一方、特別交付税は2回に分けて算定されます。

それでは、地方財政計画と地方交付税の間にはどのような関係があるのか。それは下の財源保障の定義式で示されます。

交付団体ベースの一般財源

=地方税(除く不交付団体水準超経費)等+地方交付税等

=基準財政収入額+留保財源+特別交付税+普通交付税(=基準財政需要額-基準財政収入額)

=特別交付税+基準財政需要額+留保財源

 つまり、交付団体ベースの一般財源は、特別交付税(個別団体の実情に沿って財源保障される部分)、基準財政需要額(個別団体の外形的な条件を基に標準的な額として財政需要を算定する部分)、留保財源(基準財政需要額に算入しないで、財源保障の対象としない部分)に区分されます。
国が法令等で定めた標準的経費、というような表現がされることがありますが、それは、地方財政計画の歳出を指します(厳密には、不交付団体水準超経費を除いた額)。したがって、交付団体ベースで一般財源ベースの「標準的経費」は、特別交付税、基準財政需要額、留保財源の3つのうちのいずれかで対応されることとなります。
言い換えるなら、基準財政需要額を標準的経費と考えるのは間違いです。標準的な額として算定するとか、標準的経費の一部を算入するとかいう表現ならば良いですが、その額をもって、地方財政計画で想定している財政需要の全額を賄うことはできません。
基準財政需要額には、義務付けの高い経費ほど優先的に算入しますが、義務付けが弱くなるほど、一部算入あるいは全額非算入(すなわち留保財源対応)となります。即ち、特定の財政需要は、特別交付税、基準財政需要額、留保財源のうちのどれか1つで対応するとは限らず、2つまた3つ全部で対応することもあります。
投資的経費における事業費補正は、全額算入ではなく、一部であることが通常であり、残りは留保財源対応です。お隣の竜王町(以前は栗東市も)のような不交付団体で特別交付税が不交付のことがあるのは、基準財政需要額では捕捉できない特別な財政需要があっても、留保財源あるいは財源超過額で対応できるとみなされているからです。
標準的な財政需要に対して、留保財源対応の部分があることで、自治体には財政力格差が生じます。下水道事業など公営企業(日野町では昨年度より下水道事業が公営企業会計となりました)には繰出基準がありますが、繰出し額のうち基準財政需要額に算入されているのは一部です。したがって、税収に乏しい団体では公営企業の経営に伴う財政負担は決して小さくありません。
以上のような地方財政の基本を知ることはきわめて重要であると思います。地方財政制度は、この国の国柄を決めるほどの影響力があります。それだけに私たちは地方議員である以上、その制度理解に努める必要があると思います。

全国市町村国際文化研修所。通称JIAM
初日の講堂。一番乗りでした
夜は自室にてその日の講義を振り返ります。その日のうちに復習しないと、最近はすぐに忘れてしまします

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